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今回展示している14作品の中でダンボールの作品は3点。2015年から継続しているシリーズです。ダンボールに女性を描き、画面をカッターナイフで切り刻んでいます。


このシリーズを描く様になったきっかけは、差別や暴力に対する人権運動や、性暴力被害者の抗議活動に触れたからです。

カースト最下位のダリット(不可触民)は、インド社会の中で人間としての尊厳を与えられていません。上位カーストの者の前で食事した事を理由に殺害されたり、上位カーストとダリットに同じコップで水を提供した食堂が焼討ちにあったり。

中でも女性は、カースト差別に加え女性差別の対象となります。何世紀にも渡り男性の所有物とみなされ、ダリットのコミュニティの中で差別され、支配されています。


ダリットはこのシリーズを描くきっかけになりましたが、あくまで一例であり、描かれる人物に特定のモデルはありません。



テーマは、社会的弱者の絶望や、諦め、隷従です。


この様な重苦しいテーマを描くのは、決して心地良いものではありません。怒りや憤りに裏付けられた破壊衝動が画面を切り刻みます。画面にぶつけた破壊のエネルギーは自分に返り、自分を切りつけます。

それでもこの不快な絵を描く理由は、僕自身が、苦しみや痛みに目を背けてはいけないと感じているからでしょう。そして、どこか共感しているのだと思います。

いや、僕自身の姿を描いているだけなのかもしれません。

パンデミックなんて言葉をまだ知らない今年のはじめ、個展開催が決まった。

前回からの2年半は、制作が充実し、作品が溜まっていた。

18回目、僕自身が待ちに待った個展だった。


とはいえ、準備段階の4月、5月は緊急事態宣言の最中。

開催すべきか否か、日々の情勢を注視しながら、中止を想定をしながら、開催を前提に準備を進めてきた。


今回の来廊者数減は必至。

でも。こんな時だからこそ、現状を受け容れて、前向きに出来る限りを尽くした。

そのひとつが、オンラインの活用。


でもね、やっぱり、作り込んだギャラリー空間で、目の当たりに体感して貰いたい。

画像越しと実物では、エネルギーの質が余りに違うから。

これはエゴでしかなくて申し訳ないけれど、オンラインでは伝わりきらないと思うのは、今回の作品への自信の表れかもしれない。


とはいえ心身共に健康第一ですから、ご無理なきようお願いたします!


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