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漂流

「漂流」と題した絵が完成した。

8月末にエスキースを開始しておよそ2ヶ月。自分の身体より大きければ大作としているから「漂流」は大作の部類に入る。このサイズを選んだ理由は、今年最後の挑戦となる公募展の規定最大値だから。

今朝「漂流」はトラックに載せられ、審査会場へ運ばれていった。走り去るトラックの後ろ姿を見えなくなるまで見送りながら、「帰ってくるな」と心で呟いた。大賞を獲れば賞金で買い上げとなり、美術館に収蔵されるからだ。

「漂流」は、ロヒンギャ難民問題から着想した。重いテーマをユーモアに交えて表現する作品に憧れはあるが、自分には難しい。そもそも、シニシズムというものが自分の中に存在しないからなのだ。事物を斜めから見るよりも、真っ正面から中身をえぐり、そこに入り込んで内側から見たいと思う。痛みや苦しみを表現するならば、自分がそれを感じたいと思う。

さておき、大作と呼べる作品は久しく描いていなかった。母の介護に始まり、その後の鬱々とした日々に、まるっきり描けなかった時期は少なく見積もっても3年半はあった。

「美術の道に進みたい」と母に告げた中学最後の冬休みからずっと絵をやってきたのだけど、あの3年半、自分は漂流していたのだと思う。絵描きとしてのアイデンティを失した時、日本画家であった父との繋がりが消え、絵描きの自分を応援し続けてくれた母との繋がりが消え、大海に漂っていたのだ。

そんな過去を思いながら久々の大作を描き上げた今、僕は絵描きとしての人生を再スタートしたばかり。

ここから先は、着実に、大地を踏みしめて歩いて行きます。

「漂流」の為のエスキース1/9

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